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身代わりの薔薇は褐色の狼に愛でられる一、二巻発売記念お礼SS

【幸福な時間】



「ローゼ、入るぞ」
「ど、どうぞお入りください……」

 言われるがまま扉を開けたヴァンは、そこでふと違和感を覚えた。
入浴を済ませてからローゼの部屋を訪れ、扉を叩く。ここまではいつもと同じだ。 
けれど、普段ならここでローゼが内側から扉を開き、ヴァンをにこやかに出迎えてくれるはずなのに。今日は一体どうしたことなのだろう。
 不思議に思いながら寝室に足を踏み入れると、果たしてローゼはそこにいた。
 ただし手を縛られ、目隠しをされた状態で。

「!? ローゼ、一体どうした……!」

 なにごとかと慌てて駆け寄り、妻が怪我をしていないかを真っ先に確かめる。
 幸いにしてローゼは無傷だったが、明らかに普通でない状況に周囲を警戒しながら、ヴァンは問いかけた。

「誰がお前にこんなことを……ああ、赤くなっているではないか」

 粗縄はローゼの手首にしっかりと食い込んで、彼女の白い肌に痛々しいほど赤い痕を残していた。
 続いて目元を覆い隠す白い帯を取ろうとすると、ローゼがハッとしたように首を振って、その手から逃れる。

「と、取らないでください!」
「は……!?」

 思いもかけない言葉に、ヴァンはぴたりと動きを止めた。
 まじまじとローゼを見るが、表情も口調も大真面目であり、冗談を言っている様子ではない。

「こ、これはアンナに手伝ってもらって、自分でしたことです……」

 消え入りそうな声と共に俯く顔は赤い。
 ――――自分でしたから取らないで欲しい? 一体なんのために……。
 そんなヴァンの内心の疑問をくみ取ったかのように、目隠しをしたままローゼはこう言う。

「……サイドテーブルの上の引き出しを開けてください」

 言われるがままに引き出しを開け、ヴァンはぎょっと目を瞠った。
 そこに入っていたのは、『夫婦で学ぶ、夜の営み』。数日前にヴァンが街の書店で買い求めた、夫婦生活のための実用書だったからだ。

「なっ!!」

 ――――なぜこれがここに!!
 驚きすぎて二度見した後、軽く後ずさったほどだ。
 しかも本は、開かれたまま置いてある。
 見たのか。これを見たのか。この純真な妻に見つかってしまったのか。

 大慌てで本を胸の中に抱き込み、意味もなくきょろきょろと周囲を見渡した。
 ローゼはと言うと、ヴァンが本を手に取ったことを物音や気配で察したのだろう。相変わらず耳まで真っ赤に染めたまま、小さな声でぽそぽそと話を続けた。

「す、すみません、あの……実は今日、辞書をお借りしようとヴァンさまのお部屋に入って……そこでそれを見つけて……」

 それがどうして、この状況に結び付くというのか。
 更なる混乱の渦に突き落とされたヴァンに、ローゼはまたしてもこう指示する。

「……今度は、下の引き出しを開けてください」

 まさか、こちらにも別の本が入っているわけではなかろうな。
 嫌な予感に顔を引きつらせながら下の引き出しを開けると、そこには蝋燭や鞭に張り型と言った、いわゆる『大人の玩具』がたくさん入っていた。
 パーン! と小気味いい音を立てて、引き出しが高速で閉まる。閉めたヴァンは真顔だったが、心の中は蜂の巣を突いたかのような大騒ぎであった。

「ローゼ……これは一体……?」

 できるだけ平静を装いつつ質問するが、声は妙に震えて掠れている。

「あの、わたし、ヴァンさまがそういうのがお好きだなんて知らなかったものですから……」

 ――――そういうのってなんだ。
 慌てて本に目を落とせば、目印の折り目が本来付けておいたのとは逆方向に折れ曲がっており、ちょうど『普通の営みでは物足りない、嗜虐趣味の夫に! ~道具を使った高度な交わり~』との見出しが飛び込んでくる。

 ――――最悪だ!!
 可愛い妻をいじめたいと思う感情は否定しないが、それはあくまで普通の行為の一環として少し意地悪なことを言って困らせたりとか、少ししつこくして嫌がる妻の様子を喜んだりとか、その程度のものだ。
 誓って、こんな特殊な性癖を持っているわけではない。
 それなのに、ローゼはヴァンにそういう趣味があると、完全に思い込んでしまったようだ。

「アンナに、そういった趣味の方が使うという道具を用意してもらったのです」

 ――――そういった趣味って!!
 ヴァンは壁に頭をゴンと打ち付けた。

「あ、あの、わたし頑張ります……!」

 頑張らなくて良いから! と叫びそうになったのも無理もない。
 ヴァンは疲れたようにため息を吐くと、ローゼの傍に腰かけた。
 目隠しを取ってから誤解を解こうと思ったのだが、ギシリと寝台の軋む音にローゼがびくんと体を強張らせたのを見て、考えを変える。

 頑張ると言いつつも、やはり鞭や蝋燭などと言った道具を使うのが怖い気持ちは、隠せないでいるようだ。
 ――――少し、脅かしてやろう。
 意地悪な笑みを浮かべたヴァンは、滑らかな頬に指を滑らせて、ローゼの耳元で囁く。

「痛くても良いのか……?」
「ヴァ、ヴァンさまがそうなさりたいのなら……我慢……できます……」

 我慢できると言いながらも、その声は震えている。
 一生懸命勇気を出して、夫の欲望に応えようとする姿はいじらしい。

「そうか、では遠慮せずに痛くしよう」

 喉を鳴らして笑いながら、ヴァンはローゼの身体を寝台に押し倒す。いつもより強張っている身体は、あっけなく敷布の波に沈んだ。
 柔らかい唇を塞ぎ、手慣れた様子で夜着の前を肌蹴る。
 嗜虐趣味はなくとも、目隠しをしている相手と口づけをするという背徳感に、いつもより少し興奮してしまうのは否めない。

「んんっ」

 手をつなぐと、ローゼがびくんと体を跳ねさせた。
 視界を遮られている分、何をされるか分からないのが恐怖を煽るのだろう。
 いつ鞭を振るわれるのか、いつ蝋が肌を伝うのか。そんな風に脅えているに違いない。
 ――――単なる道具ですら、自分以外の物が妻の柔肌に触れることを想像するだけで面白くないと思っているヴァンが、そんなことをするはずがないのに。

「どうだ、痛いか?」
「い、いたくない……です……ッ」

 鞭を振る代わりに、指先で丁寧に愛撫する。
 蝋を垂らす代わりに、舌先で優しくくすぐる。
 痛みは一切与えずに、蕩けるような快楽だけをただ妻の体に刻み込んでいく。
 そのたびに、ローゼは自分の肌に触れる物の正体が道具でないぬくもりを持っていることに安堵している様子だった。
 だが、安堵しつつもヴァンがいつまで経っても道具を使わないことに疑問を覚えたのだろう。

「ん……っふ、や、ぁ……ヴァンさま……?」
「どうした」
「あ……どうして……?」

 そんな風に、不思議そうに聞いてくる。
 ヴァンは笑いながら、ローゼの目隠しを取った。水色の瞳が、戸惑いで揺れている。

「俺が、お前の痛がることをすると本気で思ったか?」
「えっ!? ……ひあっ!」

 指で秘所に触れれば、ローゼが驚きに悲鳴を上げた。

「――――あぁ、いつもより濡れているな。見えなくて、興奮したのか」
「ち、ちが……やっあっ」

 そう言いながらも、身体はやはり正直だ。
 濡れた場所はいつもより敏感に、差し入れたヴァンの指に吸い付いてくる。その指をばらばらに動かしながら、ヴァンは胸の尖りに軽く歯を立てた。
 中がぎゅっと締まり、より強くヴァンの指を食い締めた。

「い……っ」
「今のは少し痛かったか? だが、それだけではなさそうだな」
「あっ、ん、んぅ……っ」
「……抜けなくなってしまいそうだ。お前は、少し痛い方が悦ぶようだな」
「そ、そんなこと……っ」

 否定しながらも、指でこじ開けられた秘裂の隙間からはとろとろと絶え間なく蜜が零れだしている。
 その蜜がヴァンの指によって攪拌されて泡立ち、白く濁っていく。
 ヴァンはもう一度、ローゼの胸の尖りに噛みついた。

「やっ、あ……!!」

 きゅう、と中が締まり、指を奥へ誘おうと蠕動する。
 そこでヴァンは指を一気に引き抜いた。媚肉が後追いし、ちゅぷんと淫らな音を立てて離れる。軽く開いた入口は、はくはくと息をするかのように淫らに蠢いている。

 指でさえあれほどの締め付けであれば、己自身を包み込んでもらえればどれほどの悦楽がまっているだろう。
 目も眩むほどの愉悦の海に溺れたい。
 こくりと喉を鳴らし、ヴァンはその場所に自身を押し当てた。
 目隠しをしているローゼを組み敷くのも興奮するが、やはり目と目を合わせて抱き合うほうが良いに決まっている。

「挿れるぞ、ローゼ……」

 宣言と共にヴァンは腰を進め、
 温かく
 柔らかな
 妻の中に――――。








「……様。旦那様」

 軽く揺さぶられる感覚に、ヴァンはがばりと体を起こした。
 目の前には老御者がおり、こちらを見下ろしている。
 ローゼは? と周りを見渡せば、そこはつい今しがたまでいたはずのローゼの部屋ではなく、馬車の中であった。

「屋敷に帰りつきましたぞ」
「そ、そうか……」

 どうやら、城から帰る途中の車内で眠ってしまっていたらしい。
 せっかく幸せな夢を見ていたのに、非常に惜しいところで目覚めてしまった……。せめてあと五分、遅く目覚めていれば。
 落胆しながら身を起こし、仕事用の鞄を抱えて欠伸をかみ殺しながら馬車を出る。
 屋敷からは夕飯の香りが漂ってきていた。この香ばしい香りは、鶏肉を炙り焼きしたものだろう。非常に食欲をそそる良い匂いだ。

 夢の名残にやや肩を落として玄関を潜ると、二階からパタパタと足音を立ててローゼが降りてくる。

「お帰りなさいませ、ヴァンさま」
「ローゼ……」

 その、満面の笑みに。
 もう一瞬で、先ほどの夢のことなんてどうでもよくなる。
 つられて唇を緩めたヴァンは、鞄をその場に置くと、近づいてきた妻をぎゅっと抱きしめた。
 腕の中に感じる温もりと柔らかさに、胸の内にじわじわと幸福が広がっていく。
 やはりどんな夢を見ようとも、本物の妻には叶わない。
 戸惑うローゼをより強く抱きしめながら、ヴァンは彼女の耳元で優しく囁いた。

「ただいま、ローゼ」



『身代わりの薔薇は褐色の狼に愛でられる』書籍版一、二巻をお買い上げいただき誠にありがとうございます。
少しでも皆様にお礼の気持ちをお返しさせていただきたく、ささやかではありますがこちらの小話をご用意させていただきました。
少しでも楽しんでいただければ幸いです。

本日、発売された二巻では書きおろしなどもございます。そちらについてもご感想などいただけたらとても嬉しいです。
あと個人的な萌えを語らせていただくとすれば、孤児院の創立記念のイラストで、ヴァンが猫のぬいぐるみを持っていたことでしょうか(笑)
あのシーンでは、挿絵に関して特に細かい指定はしていなかったのですが、絵師さまが細かいところまでこだわって下さってすごく感激でした。
もちろん他の挿絵もすべて素敵で、ルーディスもスタールもイメージ通り。
夏服姿のキャラクターたちを見ることができて、非常に眼福です。

ちなみに表紙の薔薇のブランコは、ヴァンがせっせと作ったのではないかと友人間ではもっぱらの評判でした(笑)
ローゼの笑顔が見たくて、一生懸命手作りしたにちがいありません。

おかげさまで二巻を無事発売することもでき、皆様には感謝の気持ちでいっぱいです。
また三巻が発売されたときには、このような感じでお礼小話を書かせていただきたいと思います。

ここまでお付き合いいただき、まことにありがとうございました。
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コメント

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るし様

初めまして、拙作をお読みいただけてとても嬉しいです。
電子書籍から、わざわざサイトまでご覧いただいたのですね! ありがとうございます。
そして、シリーズ全作に目を通していただいたとのこと、本当に感激しております。
お褒めのお言葉を頂き、今まで書いてきて良かったなぁと励みになる思いです。

また、月下と砂漠についてのご質問ですが、今のところそういったお話はありません。
それから、漫画化につきましても同じです。
そうなったら嬉しいなぁと思いつつ、そのあたりは出版社さまに期待ですね(笑)

たくさんの嬉しいお言葉、本当にありがとうございました。
これからも頑張って書いていきますので、どうぞよろしくお願いいたします。
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プロフィール

白ヶ音 雪

Author:白ヶ音 雪
 白ヶ音雪と申します。主に『小説家になろう』および『ムーンライトノベルズ』様で活動させていただいております、恋愛ファンタジー小説書き。
(プロフィール画像は狛さんに描いていただきました)
 どうぞよろしくお願い致します。

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